何があっても戻れる仕事場の強さ
社会学者で認定NPO法人 ウィメンズ アクション ネットワーク理事長の上野千鶴子さんの、東大入学式でのスピーチが話題になっています。
私は次の部分にいたく感動しました。あなたたちが今日「がんばったら報われる」思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください
一般人としては、頭の良い、資金のある人たちが、全員恵まれないひとびとを助けるために、その知恵と資金を使ったら、日本はどんなにかよくなるだろうと感じます。
私も、ない知恵を振り絞って、環境に恵まれないひとびとを助ける何かができたらと思います。
上野氏は、女性が生き抜く厳しさについても語っていました。人口比率は半々なのに、東大女子は2割を超えません。
この祝辞では「息子は大学まで、娘は短大まででよいと考える親の性差別の結果です」と言っています。
胸を張って子どもの入学式に参列した保護者に対し、この祝辞。勇気がなければ言えませんよね。
昔は「私と仕事とどっちが大事なの」なんてセリフが流行りましたが、女性はずっと「仕事と家庭とどっちが大事なの」と言われ続けています。
言われ続けている割に、優しい社会になっていません。
障害者に対しても同じです。
私たちReジョブ大阪は中途障害者の支援をしていますが、この人たちも、本当は、自分が望んで入った会社に戻ることが理想のはずです。
出産、育児の休暇を経てその女性がもといた会社に戻れるように、手術、リハビリを経てまたリハビリが途中であっても、障害者も、もといた会社に戻れるような社会が理想のはずなのです。
さて、多様性を受容した社会ほど、変化に強く、生き残ってきた人類史。
企業でも、そうしたところほど、変化に強いはずです。
女性にも障害者にも「お帰り」と言える企業が、最後は生き残るのではないでしょうか。
こんな記事も読みました。
『障がい者ががんばってくれるから、みんなが伸びるんだよ』
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15663
神奈川県厚木市の会社です。
障害者を雇って30年。その間、雇う側として大きな負担を感じていないと言います。むしろ、当時の売り上げが2000万円程で、現在は約9億円。感謝しているほどだと。
障害者を雇い、健常者と働かせることで「工夫」が生まれるのだそう。
それは、まさに変化が起きたときに絶対に役立つ「知恵」のはず。
「誰もができる仕組み」「誰でもできるマニュアル」これらも障害者目線で作ることにより、この会社はこれからも生き延びて行くのではないでしょうか。
現にこの会社、ISO9001(品質マネジメントシステムに関する国際規格)を取得する際には、社内でマニュアル化が進んでいたので、約3カ月で済んだそうです。みんなで障がい者の仕事の仕方を考え、整理していくと、多くの業務でルールが出来上がっていました。これも、障がい者雇用の効果といえるでしょう。
この会社は、小、中、高校の児童・生徒が、仕事や福祉を学ぶための実習先や、障がい者雇用に関わる企業関係者が情報交換する場として開放しているのだそうです。
「障害者を雇うのは、法定雇用率をクリアするため」そんな会社と比較した時に、どちらが生き延びられるか、一目瞭然ですね。
さて、そのためにはどうしたらいいか、東大卒の女子には、是非、知恵を拝借したいと思う私でした。
NPO法人Reジョブ大阪 松嶋有香
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