失語症講習会レポート2「誤解されやすい失語症」
松嶋です。
誤解というのは、とても怖いものです。特に障害や病気に関しての誤解は、自分にまったく差別するつもりなんてなくても、相手を傷つけてしまうことがあります。そして、そうなると分かっているからこそ「どう声を掛けていいか分からない」「どう助けてあげたらいいか分からない」となり、その結果「声を掛けるのをやめておこうかな」となってしまう。これは、非常にもったいないことですよね。
まず「知る」ということが、本当に大事です。
失語症とは
失語症者向け意思疎通支援者養成講習会、第1回目は3時間の講習でした。中野共立病院、言語聴覚士の津村先生による「失語症概論」が2時間と、特定非営利活動法人日本失語症協議会副理事長の園田尚美先生の「失語症のある人の日常生活とニーズ」が1時間でした。失語症とは、大脳の言語に関する領域が損傷されることで、それまで自由に使っていた、「話す」「聞く」「読む」「書く」ということばの機能が低下し、障害された状態です。
専門家がするような、失語症者を分類し、脳のどの部分が損傷するかによって症状が違うことなどを理解することは、私たち一般人にはあまり必要な情報ではないと思います。たしかに、「前の方を打った」人は「感情」「思考」に関することに障害がある、後頭部を打った人は「視覚」に関する事に障害があるということは知識として知っていて損はないと思いますが、それよりも、失語症の方の困難さを理解し、社会とつなげることの方がずっとずっと大切に感じます。
ですから、私たち一般人がめっちゃ誤解しやすいところを挙げますね。
「話す」ができなくなっちゃった
言いたい言葉が出ない、別の言葉が出てしまう、推測できないほどの言い誤りがある、遠回しな言い方をする
このようなことが起きます。自分だったらと考えると、本当につらい気持ちになります。
私たちはそういう人を見かけると、手話や筆談をしたらいいんじゃないか?と思ってしまいますよね。でも聞こえないわけじゃないんです。手話や筆談がコミュニケーションの手段として取れないことも、失語症の方の特徴だとのこと。
では、どうしたらいいのでしょう……。
「聞く」ができなくなっちゃった
聞いた言葉の意味が分からない、複雑な内容、長い話が分からない、早口、まわりくどい言い方が分からない。この「複雑な内容、長い話が分からない、早口、まわりくどい言い方が分からない」に関しては、疲れている時は私たちでも感じます。頭がくたくたな時に、複雑な仕事の話なんてできません。そんな感じなのかもしれないと推測しますが、「聞いた言葉の意味が分からない」については、もう、同情しかできません。同情すらできているのかどうか。「ある日突然外国に行ったよう」と表現することもあるようですが、もっともっと心細い感じなんだと思います。
誤解されやすい点としては、聴力の問題ではないということ。耳が遠いわけでもない。聞こえてはいるのだそうです。なので、補聴器で補うのは違うんです。
「読む」ができなくなっちゃった
『知っといてぇや これが高次脳機能障害やで』の著者、下川さんも同じようなことを言っていました。入院時に新聞を読もうと思って広げたのだけど、何が書いてあるのかさっぱり分からなかったそうです。
これも視力の問題ではなく、見える文字が理解できないのだそう。単語もそうですが、文章になるとなおさら分からなくなるのだそう。
他に、別の言葉に読み誤ったり、文字の読み方を誤ったりします。
講義の中で、バスの料金表が読めなくて、運賃が払えず、運転士に聞いたら「書いてあるだろう!」と怒鳴られた人がいたという例が挙げられました。そして運転士に「読めないんです」と言ったら「ふざけるな!」とさらに怒鳴られたのだそう。もうほんと、しんどかっただろうと涙が出ます。
「書く」ができなくなっちゃった
文字が思い出せない、誤った文字を書くなど。そして、失語症の場合、右手に麻痺があることが多いので、物理的に文字が書けなくなることも多いそうです。
これも、「書けないなら口で言って!」となりそうですが、それが出来る人と出来ない人がいるのです。
以上「話す」「聞く」「読む」「書く」について、私たちが誤解しやすい部分を挙げました。でもどうでしょう? 他の障害でもそうですが、そういう人たちがまずいるのだということを分かり、知っておくことで、こちらもずいぶん気持ちが楽になります。そして、この失語症は先天性の病気ではありませんから、いつ自分や家族や友人がなってもおかしくないということに気づくべきです。
原因は、脳卒中のようなものだけでなく、例えば、自転車で転んで障害を負った子ども、網棚から落ちてきた水筒で障害を負った若い女性という例も知っています。
その時はひどい外傷もなかったので、病院に行くこともなかった~なんて例もあるそうです。またここからが問題なのですが、病院の先生が全員失語症に詳しいわけでもないということを心がけておかなければいけません。驚きです。
つづく深めていったのか、それが分かるようなレポートにしたいと思います。
つづく