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ガチな介護のセミナーのガチなレポート

有香さん、それ介護のガチなイベントやで

友人の内橋恵さんが東京でセミナーを開くというので喜び勇んで申し込んだのですが、どうやらガチだったらしいです(笑)
でも彼女は「いろんな立場の人に来てほしい」と言っていたので、めげずに参加してきました。結果、とても素晴らしいセミナーだったので、皆さんにもお裾分け。

主に介護施設で働く人たちが参加された今回のセミナー『脳×栄養』は、脳の病態から食事介助を考える、排泄を考えるというもの。介護の現場は日々忙しく、利用者さんの対応で背一杯だとは思うんです。でも、こういう理屈が分かっていたら、より確実に、より早く、そして結果的に利用者さんに良い結果が出る。そんなお話でした。

例えば、左半側空間無視左同名半盲の利用者さん。なんだかとっても似たような名前です。「半分見えていない」ことが特徴ですが、見え方が少し違い、その結果、食事の介助が違うんですね。

例えば、こういうメニュー

焼き魚にほうれん草のおひたし、ご飯に味噌汁という一般的なメニューです。左半側空間無視の人は、それぞれの左側が見えない。こんな感じです。

半側空間無視(はんそくくうかんむし、英:Hemispatial neglect, Unilateral spatial neglect)とは、大脳半球が障害されて半側からのあらゆる刺激(視覚、聴覚、触覚等)を認識できなくなる症候のことである。失認の一種。

Wikipedia

この人は、全てのお皿で左側の食べ物が見えず、残してしまうそう。そこで、この人に完食してもらうためには、食事の途中でお皿を左右反転させるという手もあるというわけです。

そして、左同名半盲の人はこんな感じ

同名半盲(どうめいはんもう、英: homonymous hemianopsia/hemianopia)は、神経学症候のひとつで、両眼の同じ側が見えなくなる症候のこと。同名性半盲ともいう。

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この障害者の場合は、お盆全体を身体の右側に寄せるという方法も有効。まず、自分の中心がどこか尋ねるのも有効だと聞いたことがあります。

また、両者とも、まだ残っているよーという声かけも大事。しかも右側からね。

脳のメカニズムはとても複雑で、介護の現場では他にも色々な要因で食事が大変な人がいる中、それでも、こういうことが頭に入っていたら、利用者さんを理解するのにも役立つと感じます。少なくとも、私がこうなったら、食べ物はワンディッシュにして、お皿自体が回ったらいいなーと思う(笑)←商品開発のビジネスチャンス?

他にも脳損傷の方の特徴である注意障害の種類による食事介助の違いについても触れていました。

注意障害も色々ありますが、一つのことに注意しすぎる症状と、注意が散漫な症状とがあります。これ、私たちでもありますよね。

一つの事に集中することは大事ですが、脳の障害により、集中しすぎる人もいます。そういう人に完食してもらうには、声をかけて、まだ他にも料理があることを示すことが大事とのこと。

逆に、気が散って食事が進まない場合は、壁に向かい、一人で食べさせる事も有効ですが、その場合、ご家族への説明は必須です。「なんで、うちの人だけ壁に向かって食べさせているの?」という抗議になりかねません。

さて、さきほどのワンディッシュのところでも思ったのですが、それで食事としていいかどうかはまた別の問題です。人間にとって「食事」は栄養補給以外の意味があるからです。

その点で印象深いお話も伺えました。QOLについてです。

クオリティ・オブ・ライフ(英: quality of life、QOL)とは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指し、つまりある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。

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左半身麻痺のある人に、何が出来るようになったらいいかお話を伺ったそうです。その人は、ご飯茶碗を左手で持ちたかったのだそう。お茶碗を置いて右手だけで食事はできます。でもその人はそれが嫌だったとのこと。人間らしく食事をとりたかったのでしょうね。リハビリでは、排泄に関することや歩くこと中心ですが、この人には左手で茶碗を持ちたいという願いがあり、それではと、コップを洗う練習などの手の訓練を多くしたそうです。

訓練をして自分の左手でお茶碗を持てるようになった時の動画を拝見しました。その誇らしい笑顔は、キラキラと輝いていました。

簡単に「ワンプレートでいいじゃん」なんて思った私の浅い考えが恥ずかしくなりました。

グループワークもたくさんあったのですが、退院後、一番患者さんに近いところにいる方たちが、どんなことに気をつけてケアをしているのか、私はその話をたくさん伺って、日本っていい国だな!とさえ思えました。もちろん、医療にも福祉にも、国の制度にも、改善すべき点は恐ろしいほどあります。でも、なんか、私たちの向かっている方向は間違っていないと感じたセミナーでした。

追伸:内橋さんは、NPO法人Reジョブ大阪の西村さんを通じて知り合ったのですが、とにかく明るくて楽しくて、そして「ヒョウ柄の似合う」強い女性。これからの活躍も楽しみです!

内橋恵
脳卒中と栄養ケアのコンサルタントナース
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
NST専門療法士
日本救急医学会ICLS・BLS認定インストラクター
日本神経救急医学会ISLS認定インストラクター
https://nurture-meg.com/