交通機関を利用できるかどうかではなく、職場でパフォーマンスがでるかどうかが大事。

NPO法人Reジョブ大阪では毎月『脳に何かがあったとき』という冊子を発行しています。2022年12月号は、チームメンバーである、大場先生、山口先生お二人の専門家に、それぞれの立場から、高次脳機能障害のある方の「就労」についてお話を伺いました。また、実際に就労支援施設を運営している、合同会社わくわく堂の辻様にもご寄稿いただきました。取材をした中で、就労に関することは冊子に掲載していますが、ページ数の関係で割愛した記事があり、これまた素晴らしい内容なので、先生の許可を得て2つ、公開します。
1復職条件を明確に持っていない会社が変にこだわる、ずれたポイント
体に麻痺がある人にとっては、交通機関を利用できるようになるということは大事なポイントです。ただ、職業準備として、必ずしも達成していなければいけないことではないと思っています。交通機関を一人で利用できないとしても、誰かの助けを借りたり、何らかの手段で職場に行けたりするのだったら問題はないと、会社側には伝えています。
大事なのは、通勤途中のことではなく、職場でどれだけのパフォーマンスが出せるかということ。交通機関の利用っていうのは、そんなに重要なポイントではありませんよね。むしろ別の視点が必要。通勤時、駅構内の情報量の多さ等にパニックになる当事者さんもいます。いわゆる、職業能力は持っているけれども、通勤能力が残っていないっていうケースです。そのような時には、会社側の認識の方を変えてもらうこともあります。復職の条件からの見直しという感じで、支援者側がアピールすべきことですね。
昔は、仕事をする上での問題点は、身体障害をベースに考えられたような気がします。実はよく考えると、一人で通勤できるかどうかっていうのは、実は身体の問題だけではなく、外部刺激が多すぎて満員電車や駅の騒音で認知資源が減ってしまうというような精神の問題があるんですが、おそらく、会社側はそれを想定していないと思います。
そもそも復職条件を明確なものとして持ってない会社が多いので、つい考えやすい定規「一人で通えるかどうか」みたいな感じで言ってきますが、そうではありません。例えば、奥様が会社まで車で送ってくれるとか、朝、同僚がピックアップして会社まで連れてきてくれるとか、会社まで来る方法には色々な方法があります。
職業訓練学校に通うための条件で、よく、「一人で通えること」とありますが、そんな点で門前払いしてじゃダメです。今までは多分それで済んでいたのかもしれませんが、これからは柔軟な支援をしていかないといけません。
2コロナがもたらした新しい働き方
就労支援の際、時代の流れもあり「在宅勤務」という新しい形で、これまでの業務を継続するという提案もしてきました。会社側からその方法を提案してきたというケースもありました。
最初にその支援をしたのは、コロナより前だったので、在宅業務に関する社内規定なんてない頃です。なのでまず、出退勤の確認をどうするか、業務報告はメールでするのかとかという、かなり手探りな状態でした。コロナを経て、今はそういう規定をあらかじめ持っている会社も増えてきましたよね。
あと、盲点ですが、高次脳機能障害で在宅業務の場合、働きすぎ防止が重要なのです。だいたいにおいて、倒れた人っていうのは、元々頑張りすぎてしまうタイプの人たち。それをどうセーブしていくかを会社側と一緒に考えていきます。
障害者の在宅勤務に関しては、コロナも経たので、今は、前向きな提案ができます。会社も、ある意味、強制的に中途で経験を積めたのだと思います。
高次脳機能障害の就労特集
『脳に何かがあったとき』は、会員制で、個別には販売しないのですが、12月号だけ、こちらで特別に受付中!(30冊で締め切ります)
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大場龍男
川崎市北部・中部・南部リハビリテーションセンター、就労支援アドバイザー。NPO法人翔和学園ワークセンター顧問。1979年京都大学経済学部卒業、 1983年国立秩父学園附属保護指導職員養成所(現・国立障害者リハビリテーションセンター学院)修了。社会福祉法人富岳会、横浜市総合リハビリテーションセンターを経て現職。