言葉の抽象度を上げる
理事長の西村は言語聴覚士ですが、理事の松嶋は実は国語教師なんです。と言っても学校の先生ではなくオンラインで国語の塾を開いています。年長さんから高校生、大人まで数十人の生徒がいるんです。興味があったらこちらへ
ま、それはそれで(笑)
で、西村と松嶋は、二人とも「言語」「言葉」というものの専門家でもあります。そこで時々、配信で、言葉のことについて話しています。今回は「言葉の抽象度を上げる」ということについて二人で話したことを収録しました。
例えば、高次脳機能障害や失語症のある方が、自分の症状について、会社に説明をするとき、「私はこういう時にこういうことができません」「こんなことが苦手です」「私はこういう時にこうしてくれると助かります」というような、具体例をいくつもいくつもあげます。でも、最初と最後に、まとめとして重症度をあげて書いておかないと、再現性が難しいんです。
特に障害のことを知らない人は、具体例をいくつも挙げてもらうと分かりやすくはなるんですけれども、結局、抽象度上げておかないと、普遍性がなく、今まで上げた具体例になかったような新しい困りごとが生じた時に、いちいちその場合はこうで……と説明しなければなりませんよね。
もちろん具体的なパターンに落とし込むことは大切です。疲れた時に休めるか、もともとどういう体制なのかという、その職場ならではの環境の違いもありますからね。でも抽象度を上げると再現性がぐっと増します。
例えば、易疲労という症状が強く、脳が疲れやすいですと伝えたいとします。
具体例を挙げると分かりやすくはなります。
症状は人によって違いますが、
パソコン仕事では60分ぐらいで疲れてくるので、10分の休憩が欲しい。
現場の仕事では体はそれほど疲れないので、休憩は他の人と同じで良い。
でもそのあと報告書を書く仕事は無理なので、翌朝にしてほしい。
などと、細かいパターンを書くと、伝わるのは伝わるんですが、深く理解はされず、例えば新しい条件の仕事が来た時に「ではこの仕事の場合はどうなのか」ということがイメージできないのです。もちろん、その都度聞いてくれる会社は素敵ですが。
そこで、
頭脳労働の場合は60分に10分の休憩
肉体労働だけの場合は不要
肉体労働のあとの頭脳労働は無理
このように抽象度を上げておくと、相手が理解しやすくなり、新しい業務を依頼する場合、依頼する方が頭を使えばよいだけになります。
本当の事を言えば、MSWや支援者が補助してこの作業することが望ましいです。なぜなら、他の障害と違い、抽象度を上げること、そのものが難しくなってしまっているからです。
入院中に言語聴覚士に相談してみるのが一番良いと思います。
以上、文章力養成コーチ(胡散臭い名前でしょう?)の松嶋からでした。
西村は言語聴覚士の立場からお話をしています。抽象度を上げるために、まずは具体例を紙に書くことが大事とのこと。
紙に書くことは、とにかく基本ですね。脳の中だけで物事を整理するのは結構無理です。というのは、脳というのは、モノタスク、一度に一つのことしか考えられないからです。一度に色々なことを考えられているように見える人も、タスクスイッチングと言って、タスクを高速で切り替えているだけ。しかもこの行為は脳の大脳皮質を収縮させ、大脳自体を圧迫してしまうんです。危ないです。
西村は言語について、言語聴覚士としてブログをたくさん書いています。