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失語症のお話(1)

今日は、失語症についてお話しします。

失語症は、いまだに病院でも誤解されることが多い病気です。

失語症とは、言葉を受け持っている大脳の「言語領域」という部分が、脳梗塞や脳出血などの脳卒中や、怪我などによって傷ついたため、言葉がうまく使えなくなる状態をいいます。

つまり、脳の損傷により「聞く」「話す」「読む」「書く」このすべてが難しくなる後遺症です。

単に、言葉が出にくい、話ができない、音が歪んで何と言っているか分からない状態は、実は「失語症」ではありません。言葉が出ないだけならば、脳損傷になってすぐの時期にはよく見られる現象です。また以前、美智子様が全くお話ができなくなった時に、一部のマスコミで失語症と報道されていましたが、あちらは「失声症」といって、脳の損傷ではありません。また「失声症」であるので「聞く」「読む」「書く」は問題なくできていたと思われます。

では「失語症」とはどういう状態なのでしょうか。よく使われる説明としては、「日本にいるのにまるで外国にいるような感じ」です。周囲の言葉を聞いても分かりにくいし、話すことも難しい。今まで、言葉を意識せずにできていた日常会話でさえ、「これは何という意味か」「これをなんと言うのだったか?」「この文字はなんと読むのか?意味は?どんな字だったのか?」など、いちいち意識して考え込むようになります。

なるほど、では、言葉を忘れたの?それなら、赤ちゃんに言葉を教えるように、一から教えたら覚えられるのでは?とも思うでしょうが、それもまた違います。

私たちは、生まれてからたくさんの日本語に触れて、それらを脳内に整理しながら積み上げていきますよね。だから、蓄積した分、日本語はどんどん話せるようになります。「失語症」というのはこうして獲得した言語の知識が崩壊する症状です。言語のネットワークがばらばらになる、分かりやすく言えば、本箱の本のように、きちんと整理されていた本が、地震等によってバラバラと床に乱れ落ちてしまった状態で、何かの本を探そうとしても探せない状態です。アクセス障害とも言われています。

今日、皆さんに知って欲しかったのは、「言葉がでない人」イコール「失語症」ではないということ、そして失語症は脳内に積み上げられた言語の知識にアクセスしくくなっている状態で、言葉を知らないわけではないということです。

あなたの大切な人が失語症になった時に、コミュニケーションが取れないものと諦めるのではなく、回復のためにも、積極的に話しかけてあげて下さいね。

Reジョブ大阪 西村