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ママと本棚と失語症

NPO活動について、日々広報活動をしています。

先日、銀座にあるBar EDITにお邪魔しました。ここは、理事の石原さんが昔、週一でアルバイトをしていたお店。石原さんが上京をした機会にと、下川さんの本の企画書を携えて伺ってみたのです。

このBarは、編集者、著者、新聞記者、ライターなど、出版関係の人が集まるBar。お店の棚には、お客さんが持ってきたという著書がたくさん飾られていました。


そしてこのママ、いただいた本は読まないとのこと。ただ、書いた本人と、本を書く前から会話をたくさんしているので、その本については、エッセンスをもう理解しているのです。

なんという贅沢で素晴らしい読書法でしょう!

私たちの本、高次脳機能障害者の手記の企画書も見ていただきました。

そこで一瞬、ママの手の動きが止まったことを見逃しませんでした。その理由はあとで分かることになるのですが。

「誰にどう伝えるかが勝負よ」

「もっともっとターゲットをしぼった方がいい」

「そして、この思いを伝えたいのなら、本にするだけが方法じゃないわ、そうね、経営者が読む雑誌で連載したいって持ち込む?」

「新しい言葉を作ってもいいかもね『終活』みたいな。」

本当に惜しみなく、次々とアイデアをくださいました。私はメモを必死に取り続けました。

書籍化のアイデアをたっぷりいただいたあとで、ママが「実はね」と。

なんと、実のお姉様が脳損傷の患者さんだったのです!

こんなことってあるのでしょうか!?

左から松嶋、石原、ママ

「私、今日の話をブログにしますが、NGな部分はありますか?」

「ないない。どうぞどうぞ^^」

お姉様は、自分でお店を持ち、従業員を雇ってスナックを経営していたそうです。

そして、下川さんと同じ40代で倒れたそうです。

「覚悟してください」という病院からの連絡で、朝一の飛行機に乗り向かったママ、これはお店に出るのは無理かも知れないと判断して、連絡したところ「明日、お給料日なんですけど」と言われたとのこと。

幸いお姉様は一命を取り留めましたが、ママは自腹でその人達のお給料を支払い、1年間、会社に勤めながら、このスナックを経営したとのことです。

お姉様は、ご実家で病院と施設を往復する生活。元気にしているそうです。30mくらいは歩けるそうです。左脳損傷なので、言葉が出ません。失語症です。

また、ママは「脳を損傷しても良くなる人とそうでない人がいる。私は、一刻も早く病院に行くかどうかが結構大事だと思うわ」

そう仰っていました。

※医学的フォロー記事は西村が後日書きます。

このことでハッと思い出したのが、私の母のことです。

「平成」の年号を発表したことでも有名な、小渕元総理大臣ですが、ある日の記者会見で、急に言葉が出なくなったんですね。

私は「あれ?どうしたんだろう。みんなに問い詰められて緊張しているのかな」と思った程度なんですが、看護婦をしていた母がいきなり

「大変!早くこの人を病院へ!早くしないと!」

と叫びました。私は母の剣幕の方がびっくりしたんですが。

翌日、小渕元総理大臣は脳梗塞で倒れ、緊急入院し、何日か後に死亡しました。2000年(平成12年)4月2日に脳梗塞を発症した。この前日、連立与党を組んでいた自由党との連立が決裂しており、4月2日午後、政権運営がより困難になったと思われるこの緊急事態について記者から質問されると小渕はしばし答弁できず、無言状態から言葉を出すのに10秒前後の不自然な間が生じていた。これは一過性脳虚血発作という一過性の脳梗塞の症状と考えられており、梗塞から回復したときに言葉を出すことができたとされる。(wikipedia「小渕恵三」より)

おじいちゃんやおばあちゃんが、急に言葉につまったら、病院に連れて行こうという啓蒙CMもあります。

ママからは、書籍についてのアドバイスだけでなく、言葉に詰まった人がいたら、有無を言わさずすぐに病院に連れて行くというアドバイスまで伺うことができました。

人間的にも素晴らしいママ。私はもう少しママの話を伺いたいと思います。

NPO Reジョブ大阪 正会員 松嶋有香