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言葉を失った人のボイストレーニング

沼尾ひろ子さんは、アナウンサーです。9年前に脳梗塞を発症して失語症となりましたが、懸命にリハビリをして、現職復帰をされました。

※失語症とは‥‥こちら

メンタルが大切

そんな彼女が独自に開発した「失語症者のためのボイストレーニング講座」を訪ねました。

言語聴覚士として思ったのは、言語機能だけでなく、メンタルに焦点をあてていることです。失語症の方の多くは、本当はもう少ししゃべれるのに、「話せないのではないか」「言葉がつまってしまうかもしれない」というメンタルブロックで、言葉をそもそも発しなくなってきた例がたくさんあるのです。沼尾さんのトレーニングは、そんなところをしっかりとらえた、とにかく大きな声を発声するトレーニング、languageではなく、speechのレーニングでした。

発声そのものがspeech、そして言葉を理解すること、言葉を思いつくこと、これがlanguageです。

トレーニング中の皆さんは、とても楽しそう!大きな声が出ているし!

沼尾さんの思い

失語症の方は、今まで「できないこと」をたくさん思い知らされて、どうしたらできるのか、なぜできなくなるのかと、自問自答を繰り返してきたはずです。これ以上、辛かったり泣いたりしてほしくありません。私は笑顔でトレーニングをしてほしいのです。

私自身できないことに打ちのめされて、リハビリを投げ出した経験があります。

だからこそ皆さんには、そんな思いをして欲しくありません。

楽しいと思いながら、声が出るようになったり、言葉が出るようになったら、そんなトレーニングをずっと考えてきました。

沼尾さんのトレーニングからは、会話のコツについて、「1対1」、一つ質問したら一つ答える。そのやり取りで十分。たくさんのことを一度に言わない、聞かない。できることを積み重ねる、そんな思いが伝わってきました。

農業と福祉のコラボ

このあとの懇親会では、トレーニング以外のことで非常に盛り上がりました。

失語症の人にもっとスピーチの機会があれば!

目の前の困っている人たちがいるのだから、何かできない事はないか必死に考える!

そうして沼尾さんは、今「農福連携」農業と福祉の連携を考え、なんと自ら開墾作業に勤しみながら、農業をしています。

「農業ってすごく体に良いのよね。精神的にもいいの。必ず『お天気ですね』とか『充分採れましたか』などの会話が生まれる。きちんと植えようと思うようになるし、作業に集中して気分が落ち着くし、それに、あ!こんなに進んでるっていう達成感もある。」

つい先日も、うつ病の方が農業の作業で非常に改善するという話を聞いたばかり。また、理事の松嶋が参加した「就労支援」でも元鳶職の人が農業に就労してうまくいっている症例について聞いてきたところ。

いつか皆で大型バスをチャーターして、農場を見学に行きたいねって、盛り上がりました。